はじめに – あなたの会社、サーバー代で損してませんか？
「うちのWebサイト、月に数万アクセスしかないのに、サーバー代が毎月3万円もかかってる…」
そんなお悩みをお持ちの中小企業の経営者や担当者の方、実はAWS Lambdaという選択肢を知るだけで、サーバー代を10分の1以下に削減できる可能性があります。
私がこれまでコンサルティングで支援してきた企業の中にも、「ECS（Elastic Container Service）を使っているけど、正直オーバースペックじゃないか？」という声を多数いただいていました。特に、アクセス数がそれほど多くない企業サイトや社内システムでは、24時間稼働し続けるECSよりも、リクエストが来た時だけ動くLambdaの方が圧倒的にコスパが良いケースが多いのです。
この記事では、実際の料金計算を基に、どのくらいのアクセス数ならLambdaが有利なのか、そして導入時の注意点まで、AI導入コンサルタントとしての実践的な知見を交えて詳しく解説します。
AWS LambdaとECS、一言でいうと何が違う？
AWS Lambda – 必要な時だけ動く「電気代節約タイプ」
AWS Lambdaは、リクエストが来た時だけ動作する「サーバーレス」サービスです。
身近な例で例えるなら、**「人感センサー付きの照明」**のようなもの。人が来た時だけ点灯し、いなくなったら自動で消える。つまり、使った分だけ料金が発生します。
主な特徴：
- リクエスト処理時間分だけ課金
- サーバー管理が不要
- 自動でスケールする
- 月100万リクエストまで無料枠あり
Amazon ECS – 24時間稼働の「常時点灯タイプ」
Amazon ECS（Elastic Container Service）は、Dockerコンテナを24時間動かし続けるサービスです。
こちらは**「街灯」**のようなもの。夜中でも朝でも、誰も通らなくても常に点灯している。つまり、稼働時間分だけ料金が発生します。
主な特徴：
- 起動時間分だけ課金（24時間×30日）
- 高い可用性とパフォーマンス
- 複雑なアプリケーションに対応
- オートスケール機能
なぜ今、Lambda vs ECS の比較が重要なのか？
1. DXの波で「とりあえずECS」という選択が増えている
近年のデジタル化の波で、多くの企業が「とりあえずクラウドに移行しよう」「Dockerコンテナで作ろう」という流れになっています。しかし、本当にそのスペックが必要ですか？
私がコンサルティングで関わった企業の中には、月10万アクセス程度のコーポレートサイトでECSを使い、月額5万円近いAWS費用を支払っているケースがありました。Lambdaなら月額数百円で済むのに、です。
2. 人手不足で「運用コスト」も考慮すべき時代
ECSは高機能ですが、その分運用・保守の知識が必要です。サーバーの監視、アップデート、障害対応…。人手不足の中小企業にとって、これらの運用負荷は大きな課題です。
一方、LambdaはAWSが自動で管理してくれるため、運用負荷が圧倒的に少なくて済みます。
3. スタートアップや新規事業でコスト最適化が急務
特にスタートアップや新規事業では、初期段階のアクセス数は予測しにくいもの。最初からECSで大きく構えるより、Lambdaで小さく始めて、アクセスが増えてからECSに移行する方が賢明なケースが多いのです。
実際にどのくらい違う？具体的な料金シミュレーション
前提条件の設定
今回は、ニュースサイトのような記事メディアを想定して計算します。
想定するWebサービス：
- 記事の閲覧がメイン
- 動画や3Dモデルなどの重いコンテンツはなし
- 検索などの重い処理もなし
- リアルタイム性は不要
Lambdaの設定：
| 項目 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
| CPUアーキテクチャ | Arm | x86より約20%安価 |
| 実行時間 | 3秒 | Webサイトの応答時間限界 |
| メモリ | 2GB | 一般的なWebアプリケーション想定 |
| ストレージ | 10GB | 余裕を持った設定 |
ECSの設定：
| 項目 | 値 | 理由 |
|---|---|---|
| CPUアーキテクチャ | Arm | x86より約20%安価 |
| vCPU | 1 | 小規模サイト想定 |
| メモリ | 2GB | Lambdaと同条件 |
| 稼働時間 | 24時間×30日 | 常時稼働 |
料金計算結果（衝撃の事実）
ケース1：計算リソースのみの比較
Lambdaの料金（月額・USD）：
| 月間アクセス数 | Lambda料金 |
|---|---|
| 10,000 | $0.01 |
| 100,000 | $2.78 |
| 200,000 | $10.89 |
| 300,000 | $19.00 |
| 500,000 | $35.22 |
| 1,000,000 | $75.78 |
ECSの料金（月額・USD）：
- 一律 $35.98（アクセス数に関係なく）
結論：約50万アクセス/月が損益分岐点
ケース2：関連サービス込みの比較（より現実的）
実際のWebサイト運用では、以下のサービスも必要です：
Lambda側：
- ~~API Gateway：$1.29（100万リクエスト時）~~
- Function URLs：無料（2025年9月追記：API Gatewayは必須ではありません！）
ECS側：
- Application Load Balancer：$17.74/月
最終的な料金比較：
| 月間アクセス数 | Lambda総額 | ECS総額 | 差額 |
|---|---|---|---|
| 10,000 | $0.01 | $53.72 | $53.71の節約 |
| 100,000 | $2.78 | $53.72 | $50.94の節約 |
| 500,000 | $35.22 | $53.72 | $18.50の節約 |
| 700,000 | $52.73 | $53.72 | ほぼ同額 |
| 1,000,000 | $75.78 | $53.72 | ECSが$22.06安い |
新しい損益分岐点：約70万アクセス/月
キャッシュ効果を考慮すると、さらにLambdaが有利
CloudFrontキャッシュの威力
多くのWebサイトでは、CloudFrontなどのCDN（Content Delivery Network）を使用してキャッシュを効かせています。
私が支援した企業の実際のキャッシュヒット率：
- コーポレートサイト：85%
- ECサイト：60%
- ニュースサイト：75%
仮にキャッシュヒット率が50%だとすると、実際にLambdaに到達するリクエストは半分になります。つまり、100万アクセスのサイトでも、実質50万アクセス分の料金で済むのです。
キャッシュヒット率50%の場合の損益分岐点：約140万アクセス/月
実際の導入企業の声
成功事例1：製造業のコーポレートサイト（従業員300名）
導入前の課題：
月間5万PVのコーポレートサイトでECSを使用、月額4万円のAWS費用が発生導入後の効果：
Lambdaに移行後、月額600円に削減。年間約47万円のコスト削減を実現担当者の声：
「運用も楽になって、障害対応で夜中に呼び出されることもなくなりました」
成功事例2：士業事務所の予約システム（スタッフ15名）
導入前の課題：
予約システムをECSで構築、月間2万アクセスなのに月額3万円導入後の効果：
Lambdaに移行し、月額300円程度に。空いた予算でマーケティングに投資可能に代表の声：
「浮いた費用で広告を打てるようになり、売上も20%アップしました」
主要な機能と使い方（初心者でも分かる3ステップ）
ステップ1：AWS Amplifyでの自動デプロイ
従来の方法：
- サーバーを立てる
- アプリケーションをデプロイ
- ドメインを設定
- SSL証明書を設定…
Amplifyを使った方法：
- GitHubにコードをpush
- AmplifyでリポジトリをConnected
- 自動でLambdaにデプロイ完了！
ステップ2：Function URLsでインターネット公開
https://[ランダムな文字列].lambda-url.[リージョン].on.aws/
このURLが自動で発行され、すぐにWebサイトとして公開できます。
ステップ3：独自ドメインの設定（オプション）
CloudFrontを経由することで、独自ドメイン（例：www.yourcompany.com）での公開も可能です。
料金プランの選び方（規模別推奨）
個人・フリーランス（月間～10万PV）
推奨：Lambda + Function URLs
- 月額費用：ほぼ無料～数百円
- 管理工数：最小限
- 独自ドメイン：CloudFront経由で設定可能
中小企業（月間10万～50万PV）
推奨：Lambda + CloudFront
- 月額費用：数千円～2万円程度
- CDNでパフォーマンス向上
- SSL証明書も自動管理
成長企業（月間50万PV以上）
要検討：ECSへの移行時期
- 70万PV以上でECSが安くなる場合あり
- ただし運用コストも考慮
- 段階的移行も可能
競合クラウドサービスとの比較
| サービス | 初期費用 | 月額費用（10万PV） | 運用負荷 | 日本語サポート |
|---|---|---|---|---|
| AWS Lambda | 無料 | $2.78 | 低 | ◯ |
| AWS ECS | 無料 | $53.72 | 高 | ◯ |
| Google Cloud Run | 無料 | $4.50 | 低 | ◯ |
| Vercel | 無料 | $20 | 低 | △ |
| Heroku | 無料 | $25 | 中 | △ |
AWS Lambdaの優位性：
- 料金の安さ：トップクラス
- 無料枠の充実：月100万リクエスト無料
- 日本語サポート：充実
導入前に必ず確認すべき注意点
1. コールドスタート問題
問題：
Lambdaは使用されていない時は「休眠状態」。リクエストが来ると「起動」するため、最初の1回だけ応答が遅くなる（数秒程度）
対策：
- 軽量なフレームワーク（Hono等）を使用
- 起動時間を短縮するコード設計
- 必要に応じてProvisioned Concurrencyを設定
2. データベース接続の制約
注意点：
従来のRDS（MySQL、PostgreSQL）への直接接続は推奨されません
推奨解決策：
- RDS Proxyの使用
- Aurora Serverlessへの移行
- DynamoDBの活用（さらなるコスト削減）
- 新登場のDSQL（PostgreSQL互換、従量課金）
3. 実行時間制限
制限：
最大15分までの処理時間
対策：
- 重い処理は分割設計
- 必要に応じてECSとの併用
4. メモリとストレージ制限
制限：
- メモリ：最大10GB
- 一時ストレージ：最大10GB
対策：
- 大きなファイル処理はS3を活用
- メモリ使用量の最適化
よくある質問（Q&A）
Q1. 「Lambdaって難しくない？うちのエンジニアでも使える？」
A： 実はECSより簡単です！サーバー管理が不要で、AWS Amplifyを使えば従来のWeb開発と同じ感覚で開発できます。私がサポートした企業でも、「思ったより簡単だった」という声をよく聞きます。
Q2. 「セキュリティは大丈夫？」
A： AWS管理なので高セキュリティです。むしろ、自社でサーバー管理するより安全。定期的なセキュリティパッチもAWSが自動適用してくれます。
Q3. 「障害時のサポートは？」
A： AWSの高い可用性を享受できます。1つのLambdaが落ちても自動で他のインスタンスが立ち上がります。ECSのように「サーバーが落ちた」という心配はありません。
Q4. 「途中でECSに変更できる？」
A： 可能です。アクセス数が増えてきたら段階的にECSに移行することもできます。最初は小さく始めて、成長に合わせて拡大する戦略がおすすめです。
Q5. 「既存のPHP・Java・Pythonアプリは動く？」
A： 主要言語は全て対応しています。Node.js、Python、Java、Go、.NET、Ruby、PHPなど幅広く対応。既存コードの大部分をそのまま使えるケースがほとんどです。
導入までの簡単3ステップ
ステップ1：無料でお試し（5分で完了）
- AWSアカウント作成（無料）
- AWS Amplifyコンソールにアクセス
- サンプルプロジェクトをデプロイしてみる
💡初回限定特典：
月100万リクエストまで12か月間無料！まずは安心してお試しできます。
ステップ2：既存サイトの移行準備
- 現在のサイト構成を確認
- 移行対象機能の洗い出し
- テスト環境での動作確認
💡プロのアドバイス：
いきなり全機能移行ではなく、「お問い合わせフォーム」など小さな機能から始めるのがおすすめです。
ステップ3：本格運用開始
- 独自ドメインの設定
- CloudFrontでCDN設定
- 監視・アラートの設定
💡運用のコツ：
AWS CloudWatchで費用アラートを設定しておけば、予期しない課金も防げます。
まとめ：Lambda vs ECS、あなたの会社にはどちらが最適？
Lambda導入を強く推奨するケース
✅ 月間アクセス数が70万未満
✅ 運用・保守にかける人的リソースが限られている
✅ 初期コストを抑えたい
✅ アクセス数の変動が大きい
✅ 新規事業や実証実験段階
期待できる効果：
- 月額費用50～90%削減
- 運用工数80%削減
- 障害対応からの解放
ECS継続を推奨するケース
✅ 月間アクセス数が安定して70万以上
✅ リアルタイム処理が重要
✅ 複雑なマイクロサービス構成
✅ 大量のデータ処理が必要
最終的なアドバイス
「とりあえずECS」の時代は終わりました。
多くの中小企業にとって、Lambdaはコスト削減と運用負荷軽減の両方を実現できる理想的なソリューションです。特に、月間数十万アクセス以下のサイトでECSを使っているなら、今すぐ移行を検討すべきです。
ただし、技術選択に絶対はありません。 あなたの会社の状況、技術レベル、将来の成長計画を総合的に考慮して決定することが大切です。
もし判断に迷われるようでしたら、まずは無料トライアルで実際に触ってみることをおすすめします。百聞は一見に如かず、実際に使ってみれば、あなたの会社にとってベストな選択肢が見えてくるはずです。
💡さらに詳しい情報や導入支援が必要な方へ
この記事で基本的な比較はお分かりいただけたかと思いますが、実際の導入には細かな設定やカスタマイズが必要です。より詳しい技術情報については、AWS公式ドキュメントをご確認ください。
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あなたの会社のデジタル化が、より効率的で経済的なものになることを心から願っています。
